次につなげる競馬レース回顧

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日本ダービー 好走馬回顧 『幸運な馬、そうでない馬』

2番人気のスキルヴィングがゴール入線後ターフに倒れ、急性心不全でこの世を去りました。

競馬に長く触れているとレース中のアクシデントにより残念ながら旅立ってしまう馬はやはり一定数おり、直接現地で目にすることもあります。

しかしそれが競馬の祭典日本ダービーで、大勢のファンが見守るスタンド前で起こった今回の一件は相当ショッキングな出来事でした。スキルヴィング号のご冥福を心よりお祈りします。

あまりの衝撃でダービーに関する話題がほぼほぼスキルヴィング一色になってしまっていますが、ダービー馬タスティエーラを祝福・賞賛することは忘れないであげてくださいね。

 

1着 6枠12番 タスティエーラ

スムーズに先行して直線でもスムーズに追い出し、早めに前を捕まえて後続の追撃を退け残り200mを押し切るという王道競馬でダービー馬の座を勝ち取りました。

この馬は明け4戦目での大一番でしたが非常にタフな馬ですね。そもそも共同通信杯で痛恨の4着、仕方なく予定外の弥生賞を使って間に合わせた皐月賞。しかもその皐月賞は重馬場での先行策で2着に好走とかなり身体的に負担のかかるレースでした。

その次にダービーで東京2400mですからね。3歳馬にはかなり酷なローテだったんじゃないかなと思います。その中で皐月ダービーと連続して好走しているのですから本当にタフな馬ですね。

レースですが2:25:2と前週のオークスに比べてかなり遅い時計の決着となりました。このタイムがタフティエーラもといタスティエーラを後押ししたと思っています。

サトノクラウン×マンハッタンカフェの血統からしてゴリゴリのスピード勝負が合うようには見えませんし、実際重馬場の皐月賞でのパフォーマンスも素晴らしいものでした。血統通りスピードよりもパワーやスタミナに優れた馬と見るのが正解でしょう。

そもそも後続を大きく離して逃げたパクスオトマニカの1000m通過が1:00:4であり、二番手以降の馬はかなりのスローペースで走っていたことになります。常に前目で運んでいたタスティエーラにとってはここも追い風になりましたね。

ダービーは1番運の良い馬が勝つとはよく言いますが、タスティエーラも間違いなく幸運に恵まれた馬でしょう。もちろん十分な実力が備わっていることが前提ですけども。

確かな先行力と折り合う力で好位置を確保し、呼び込んだ幸運を味方につけて最後まで踏ん張り勝利しました。ダービーを勝つ馬はこういう馬なんですね。

秋以降ですがこの馬が菊花賞の主役になるでしょう。ダービーよりもむしろ皐月賞菊花賞の方が向いている馬だと思います。現状の最有力候補ですね。

春は本当によく頑張りました。怪我をせず、何事もなく順調に秋へ向かってほしいと切に願います。

 

2着 3枠5番 ソールオリエンス

横山武史騎手はまたしてもダービー2着に敗れてしまいました。競馬の神様は武史騎手にダービージョッキーはまだ早いとお考えでしょうかね。そんな神様の思惑すら跳ね返す活躍を今後の武史騎手には期待しましょう。

さてソールオリエンスですが前走とは打って変わって内枠を活かして先団に取り付き、直線で鋭く伸びるも僅かに届かず2着。前走ほどのインパクトは無く、思ったより伸びなかったなという印象です。

ですが4角6番手から33.3の上がりは出ていてそれなりの末脚は使えています。そこまで伸びていないように見えたのは周りの馬も同じように伸びていたからというわけです。

周りが伸びていたこともソールオリエンスが前走ほどの飛び抜けた末脚が不発だったこともやはりスローペースによるところが大きいですが、ソールオリエンスに関しては直線でなかなか前が開かず少し進路に迷うようなところがありました。

前の馬とは距離があったのであまり詰まっているようには見えませんが、目の前が開けるタイミングは殆どなく、最後までノビノビ走ることは叶わなかったように感じます。

ダービーで1倍台の人気を背負って内枠スタートなのでこれは仕方ない部分です。ペースも進路もちょっとだけ運が悪かったですね。強さは見せたと思います。

そういえば皐月賞の時に左回りなら上手く曲がれるといった旨の回顧を書きましたが、やはり問題なく曲がれていましたね。武史騎手は「内に倒れる仕草があった」とのことでしたが曲がれないよりは遥かにマシです。この馬の狙いどきが左回りなのは間違いないでしょう。今回は位置取りの差です。

秋は天皇賞でしょうか?それとも菊花賞に来るのでしょうか?京都の右回りスパイラルカーブがこの馬にフィットするとは思えませんが……力はある馬ですのでコーナリングの修正が叶えば菊花賞でも好走は可能だと思います。

東京の方が良いことには変わらないですけどね。

 

3着 6枠11番 ハーツコンチェルト

松山騎手渾身の騎乗でしたね。松山騎手から乗り替わりになってしまったタスティエーラがダービー馬となるその背後であわやのところまで追い込んできたのがハーツコンチェルトと松山騎手でした。

ゲートで行き足がつかずスタートで大きく立ち遅れ、最後方からの競馬になってしまい初角も16番手で侵入していきました。

しかし2角から松山騎手が仕掛けます。ペースが遅いと見たのか長い向正面をフルに使ってじわじわと進出開始、3角を迎える頃にはなんと6番手、ソールオリエンスのすぐ外までつけていました。

加速しながら4コーナーを回り、あとは持てる力を全て使って直線で弾けるだけとなりました。この時もソールオリエンスを内に押し込むような位置取りで追い出しており、なんとしても勝ちを取りに行く気迫を感じました。

実際ハーツコンチェルトがすぐ外にいたことでソールオリエンスは外に出せず視界が開けませんでした。ゴール前までタスティエーラの後ろを走らされる格好になっていましたね。

最終的には2頭に僅か及ばずという結果になりましたが、やれることはやったと思います。この馬は運ではなく好騎乗と持てる力を出し切っての結果でした。松山騎手は相当悔しいと思います。皐月に続いて素晴らしい騎乗でした。

こうもしっかりと走られるとスタートさえ出ていれば……ロスがなければ……という気持ちにもなりますが、遅れたからこそこの形で腹を括れたという考え方もできます。むしろ遅れたことがこの馬には幸運だったのかもしれませんね。

さて秋ですがこの馬は賞金が足りません。夏で賞金を稼ぐかステップレースに出る必要があります。

本番の距離が距離なだけに余計な出走は避けたいところ。恐らく次走は確実に賞金を加算できるであろうレースを狙ってくると思います。人気次第にはなりますが、次も狙いたいですね。

 

4着 1枠1番 べラジオオペラ

この馬の幸運は枠です。1枠1番、最高ですね。ダービーはCコース替わりの開幕週で、そこを優先的に走れるこの枠は非常に有利に働きます。

スタートから一貫してラチ沿いを走り、常にソールオリエンスを視界にとらえる位置で競馬ができました。

直線でもそのままインを突いて上がり最速の33.0を記録。映像では3着に来ているように見えましたが惜しくもハーツコンチェルトにハナ差届きませんでした。

重馬場の中山で行われたスプリングステークスで抜けた末脚を披露、今回は良馬場の東京で上がり最速を叩き出しました。

競馬場も馬場も問わない、先行も差しもすんなりできる。とても器用で良い馬ですね。安定感があり馬券の軸として信頼したくなるタイプです。

ただ今回は好枠をもらいつつも力及ばず4着です。G1では少し厳しいのかもしれませんね。

G3〜G2で安定して稼いでくれるような存在になる気がしています。現状なんとなくですがヒートオンビートやボッケリーニみたいなイメージですね。距離はともかく。

 

5着 7枠15番 ノッキングポイント

この馬はキャリアの2勝をどちらも東京で速い上がりを使って勝利しています。今回のレースはこの馬にとって力の出しやすい舞台だったことでしょう。

直線で良い脚で伸びてきましたが僅かに及ばず。外枠ながら良い位置で追走し、出来るだけロスも抑えながらの競馬が出来ていましたがそのポジション取りや道中でのロスの積み重ねが響いた形となりました。ほぼ似たような位置にいたべラジオオペラとは内外のロスの差だと思います。

べラジオオペラと枠が入れ替わっていれば4着はこの馬……いや、もしかしたら馬券内もあったかもしれません。よく伸びてきましたが、結局のところ枠の時点でちょっと厳しかったかなと思います。紛うことなき不運でしたね。こればっかりは仕方ないです。

さて次走以降ですが存分に直線で脚を伸ばせる左回りの直線の長いコースが良さそうですね。夏の中京or新潟で賞金を加算できるでしょうか。

あるいは菊は目指さずにゆっくり休養するという選択肢もあるかもしれませんね。