次につなげる競馬レース回顧

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皐月賞好走馬回顧 『まるでバケモノのバーゲンセールだな』

先週に続いて今週も衝撃的なレースとなりました。

土曜日にまるまる一日中降り続いた雨でぬかるんだ最終週の中山の直線を異次元の末脚で16頭を大外一気。

あまりに荒々しく、あまりに不器用で、あまりに強いその姿に競馬ファンは2週連続のドン引きをさせられるのでした。

 

1着 1枠1番 ソールオリエンス

この馬が今週の化け物です。まるで化け物のバーゲンセールだな……。(タイトル回収)

この馬の好走は鞍上横山武史騎手の好騎乗が光ったと思っています。

まずスタート直後、最内枠からすぐに馬場の良い外へ一気に出します。この時点で最内枠という不利をほぼ無きものにしたのです。

もちろん位置をかなり後ろにしてしまいますし距離ロスもありますがそれだけこの日の馬場で内を選ぶのが悪手ということでした。(ゲート直後に外枠から内へ切り込んだ騎手もいましたが……。)

この馬は馬群に揉まれた経験が少なく、初めてのフルゲートの最内ということで馬券購入者からは不安の声もありました。この位置を選択したのは馬群を避けるという意味合いもあったのかもしれません。

そしてもう一つの不安要素であったコーナリングですが……今回も上手く曲がれませんでしたね。

かなり外に膨らみながら4コーナーを回り、馬群の1番外を通って17番手で直線に向かいました。

ここから化け物本領発揮です。一頭だけ良馬場を走っているかのような加速でぐんぐんと前に迫り、並ぶ間もなく16頭を抜き去っていきました。

上がりタイムは35.5。上がり2位のタイムが36.4なので0.9秒差の飛び抜けた超ド級の末脚だったことがわかります。

あの位置取りとコーナリングでロスの大きい競馬をしつつも直線だけでこんなに圧倒的に勝たれてしまっては他の馬はなす術がありませんし、相手が悪かったとしか言いようがありませんね。

4コーナー17番手からの皐月賞制覇は86年以降だと史上初で、従来最後方がナリタタイシンの12番手だそうで(netkeiba様Twitterより)、そもそも追い込みの届きにくい皐月賞においてこれだけの末脚を繰り出して勝利するということがソールオリエンスの化け物ぶりを物語っています。

次走はもちろんダービーでしょう。東京コースであれば今回のようにコーナリングで大きく膨らむロスも抑えられるでしょうし、手塚調教師曰くこの馬は右手前が好きということなので左回りのダービーでは今回よりも強烈な末脚が期待できるかもしれません。

不利と言われる大外ピンク帽子を被ったとしてもこの馬は抑えておくべきだと思います。終わってみれば今回この馬の単勝に5.2倍もついたことが不思議に思えてくるくらいの強さでしたね。

余談ですが、JRA公式によるジョッキーカメラ映像にて横山武史騎手が「さっすがやお前ェ!」と叫んでいました。それだけ武史騎手はこの馬の強さを知っていて信頼していたということでしょう。その力を信じてのコース取り、見事でした。

ジョッキーカメラの映像は、レース中の映像もそうですが勝利後の鞍上の言葉がとっても魅力的な要素ですよね。全騎手のバージョンが出揃うことを楽しみにしています。

 

2着 7枠14番 タスティエーラ

この馬も鞍上の好騎乗が光りました。

外枠を活かして馬群の外につけて、早い流れの道中を前すぎず後ろすぎない絶妙な位置取りでストレスなく運びました。

仕掛けのタイミングも抜群で、早めに仕掛けて4コーナーで進出して直線の馬場のいいところギリギリを選択します。

直線で早めに前に出ると上がり3位の36.5の末脚を繰り出し後ろを振り切りにかかりましたが……化け物には敵いませんでした。

ソールオリエンスに抜かれた直後、松山弘平騎手がガクッと頭を下げていましたが松山騎手も相当手応えがあったのでしょう。ケチの付けようがない完璧な会心の競馬だったと思います。

それを外からあんな脚でぶち抜かれては……肩も落としたくなるというものでしょう。

ここも先週の桜花賞コナコーストと同じようなことを話しますが、今回は本当に完璧な競馬をしての結果です。ソールオリエンスの2着という結果だけで過剰に評価するのは危険だと思います。

とはいえ先週のコナコーストと違うのは、皐月賞はこの馬以外の先行馬は10着のべラジオオペラが最先着で、軒並み馬群に沈む中で唯一上位にこの馬だけ残っていることは評価すべきでしょう。

次走はダービーだと思いますが共同通信杯弥生賞、重馬場皐月賞ときて4戦目となります。消耗具合には注視したいと思います。

 

3着 4枠7番 ファントムシーフ

この馬も道中は外の中団を追走、直線でも外を突いて伸びてきました。

しかしタスティエーラと違うのはこの馬は4枠であり、スタート直後は馬場の悪いところを走らされていて尚且つ向正面で落鉄していました。

ルメール騎手の手綱捌きで枠の不利は最小限に留めたとしても、落鉄をしてあの重馬場の中を3着まで伸びてきたのは素晴らしい走りでした。

落鉄がなければ2着は入れ替わっていたかもしれませんね。

最後の直線でも前の馬の外に行かず内を突く選択をし見事に3着へ間に合わせるルメール騎手も、それに応えてメタルスピードを差し切ったこの馬の勝負根性も流石だなと思いました。

2着のタスティエーラ共々、今年も共同通信杯組はしっかりと結果を出しました(タスティエーラはその後弥生賞も使いましたが)。

近年共同通信杯組は相当数の有力馬を輩出しており、牡馬クラシック路線最大の出世レースとなっています。

同レースで上位に入ったタッチウッド、ダノンザタイガー、ウインオーディンも今後楽しみですね。

 

4着 8枠17番 メタルスピード

タスティエーラとファントムシーフの間をずっと走っていたのがこの馬です。

外枠の恩恵をフルに活かし、抜群のポジションで進んで直線もしっかり脚を伸ばしました。

シルバーステート産駒は渋った馬場で結果を出していますので血統の後押しもあったと思いますが、タスティエーラやファントムシーフを相手に立派な走りでした。この馬の持てる力は全て発揮しての激走だったと思います。

ダービーへの優先出走権を獲得し、200万の追加登録料を払ってダービーへ向かうようです。

重馬場か不良馬場で且つ内枠に入ったらダービーでも買ってみましょう。そうでなければ厳しいと思います。

 

5着 2枠4番 ショウナンバシット

実はこの馬、ちょっとだけワープをしていました。馬券を買っていた方は鳥肌が立ったんじゃないですかね。

1〜4着の馬が徹頭徹尾外にこだわる中でこの馬は唯一、道中からずーっとガラ空きのラチ沿いを走っていました。

それだけでも凄いのですが4コーナーで各馬が外を回す中でこの馬はそのまま最内を選択、ゴールドシップの如く10番手から一気に4番手までワープします。あまりに鮮やかなワープ、俺でなきゃ見のga……私は最初にレースを見た時はワープしたことに気付けませんでした。

しかもワープした先はなんとタスティエーラの横です。外をずっと回って最後馬場のいいところを選んで走ったタスティエーラのすぐ内をこの馬は走っていました。

もし見れる方はパトロールビデオを見てみてください。この馬の通った場所がどれだけ異質かが非常にわかりやすく確認できます。

デムーロ騎手の腕っぷしと思い切りの良さ、ショウナンバシットのスタミナとパワーのもたらした渾身の走りだったと思います。

今後パワーやスタミナの要求されるレースでは狙っていきたい馬ですね。デムーロ騎手との手も合っていると思います。

ちなみにこの馬もシルバーステート産駒です。そういえば、土曜日のアーリントンカップも重馬場でしたね………?